2006年01月07日

パブリックコメントへの提出意見(1)

●知的財産基本法、および知的財産推進計画においての権利範囲について

基本法第2条1項、2項に見られる定義においては、著作権がそのまま含まれている。しかし、著作権は、他の諸権利と異なり、著作者人格権と著作財産権の二つの権利から構成されている。著作財産権については、経済的利益を目的としていることから、経済的評価になじみ、施策の計画、実施、点検、見直という計画実行手順を行いやすいといえる。一方、著作者人格権については、人格権という経済的評価になじまない価値と近い関係にあるために、創作者あるいは権利者の主観的価値判断が強く影響するため、計画実行手順を具体的に策定する場面において、評価基準を定めることが困難で、結果的に慎重な態度が要求されることになり、「保護」が先行し、「活用」に対して抑制的になる原因となっている。


とくに、コンピュータの普及による情報活用・加工技術の発展、インターネットの普及による情報配布・交換技術の発展により、利用者による知的財産の活用が容易となっており、この技術革新から生じる個人的・社会的便益を、創作者、利用者双方の利益として戦略的に取り込んでいく視点が必要である。このとき、そうした利用者における知的財産の活用は、しばしば著作物の二次的利用となり、その結果として二次的著作物が生み出されることになっている。このとき、経済的価値の観点からであれば、合理的な著作物の二次的使用(利用)条件が決定できうるだろう場面であっても、人格的価値の観点、──すなわち二次的利用法への好悪といった主観的価値── から先のような二次的利用を禁じてしまう可能性が現に存在している。また、経済産業省等からあげられている、ソフトウェアについての「ライセンス雛形」を作成する計画についても、著作者人格権との整合性が問題としてあげられているために、現在も公開がされていないと聞いている。

このように著作者人格権は、知的財産推進のための「計画」に、なじみにくい観念であるといえる。さらに、計画を合理的に設定し着実に遂行するためにも、知的財産基本法等では、著作者人格権を除いた著作財産権のみを対象として計画を立て、計画の遂行段階で生じた著作者人格権に関連する問題については、個別に対処するものとすべきである。知的財産の効果的な活用は 緊急を要するものであり、まず活用を促進する方向に舵を切るべきである。そのためにも、知的「財産」権を対象とすることを明確化する必要があるものと考える。

付言するならば、米国の知的財産の運用実態において、著作者人格権 moral right は、日本のそれに比較して著しく小さな扱いがされており、創作者・権利者の人格的利益の主張が知的財産の活用を阻害・抑制する場面がほとんどない。米国の権利強化の側面ばかりに眼を向けるのではなく、合理的(取引費用の少ない)制度運営についても学ぶ必要がある。権利強化を主とする現状のままの知的財産戦略は、いずれ創作活動の致命的逼塞状態を招く恐れがある。
posted by grigori at 15:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 記事
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